投稿日:2007年3月12日|カテゴリ:コラム

生理的な睡眠時間には個人差があることはお話しましたが、睡眠時間は年齢によっても異なります。生れて間もない赤ちゃんはお腹が空くと目を覚まして不機嫌に泣いてミルクを要求します。ミルクを飲んで満足すると束の間はご機嫌にしていますが、やがて眠ってしまいます。つまり、一日の大半睡眠状態にあります。

成長と共に身体が必要とする睡眠時間は減り、成人期になると一日の2/3程度は覚醒しているようになります。加齢が進み、老年期に達するとさらに必要睡眠時間は減り、早く目が覚めるようになります。

お年寄りはしばしば「朝早く目が覚めて困る」と嘆きますが、見方を変えれば起きていられる時間、つまり活動できる時間が長くなるのですから、それまでに蓄えてきた経験を活かして社会に貢献する仕事をされることをより一層励まれることをお勧めします。そうやって社会とのかかわりを持ち続けることが心身、特に心の老化を防止して、認知症にならないための有効な対策でもあります。

社会も高齢化を憂うばかりではなく高齢の方にその年齢にあった活躍の場を提供して活躍していただくことを考えたほうがよいと思います。高齢者とは人が勝手に年齢から分類した時期です。心に関しては自分が「年をとったな」と考え始めた時から老化が始まるといってもいいでしょう。

70歳を過ぎても素晴らしい感性を持ち、豊富な経験から、多くの人の役に立つ能力を持った若々しい方もいれば、20歳そこそこでも硬直した考え方しかできず、物事をあるがままに感じる能力に欠けて、周囲の人と常に摩擦を起こす老化した心の持ち主もいます。

さて、生理的な睡眠活動にくるいを生じた状態をすべて睡眠障害と言います。

睡眠障害の中では「眠れない」不眠症が大多数を占めますが、逆に「眠りすぎる」場合、つまり過眠症もあります。この他に近年問題になってきた睡眠障害に睡眠相(眠る時間帯)がずれてしまう病気があります。具体的には遅寝・遅起きになってしまい、出勤時刻に間に合わないために、通常の社会生活が営めなくなってしまうのです。特殊な病気としては昼間、活動中に突然眠ってしまう睡眠発作が特徴的なナルコレプシーと言うものもあります。

以上お話した睡眠障害は睡眠の量や出現時間帯の異常ですが、睡眠の質が悪くなる病気もあります。睡眠の質を客観的に知るには眠っている間の脳波を測定するなどのややこしい検査をしなければなりません。したがって、自覚症状だけから簡単に見つけ出すことができません。睡眠中の脳波をみると、レム睡眠、ノンレム睡眠(オルソ睡眠とも言う)の出現量、睡眠の深さ、レム睡眠の出現パターンなどを知ることができます。

そういった指標を分析すると一見ちゃんと眠っているように見えても実は不健康な睡眠であることが判明する場合があります。睡眠の質が悪いと昼間に睡魔に襲われたり、集中力を欠いたりといった現象が現れます。

夢についてはフロイトの夢分析が有名です。しかし、「長い突起状の物は男性器の象徴で、そういう物が登場する夢をよく見る女性は性的に欲求不満である」といった解釈は、お話としては面白いかもしれませんが、あまりにも安易な解釈ですし、科学的実証性が乏しく、今やあまり信じられていません。しかし、うつ状態の方の夢は恐怖を伴う内容だったり、焦りを感じる内容であることが多いようです。夢は何らかの形で脳の活動状態を反映していると思われますが、詳しいことはまだよく分かっていません。

将来、脳の活動状況をダイナミックに、しかも痛みなどの侵襲を伴わずに知る方法が確立すれば夢を初め、睡眠中のさまざまな事柄に関する新発見がなされると期待しています。

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