温かく穏やかな正月気分が北朝鮮の核爆弾の1発で吹き飛ばされてしまった。この爆裂が北朝鮮の言う通り水素爆弾によるのか、小型の高性能原子爆弾によるものなのかはさておくとしても、北朝鮮の核武装が確実に進んでいることだけは確かだ。
世界の関心がISISやサウジ・イラン関係に向かう中、「極東に我あり」と存在感を主張したいのだろう。
実際にアメリカやロシアは大きな利権の絡んだ中東を中心としたテロや宗派対立にかかりっきりにならざるを得ないし、中国は東シナ海、南シナ海での権益奪取や破綻寸前の経済立て直しに必死で、飼い犬の暴走に手が回らないのが実情だろう。
コラム「祖父コンプレックス」で述べたように、尻の青さを残した権力亡者に核のおもちゃを好きなように振り回させておくことは甚だ危険だ。
とは言え、いくらお裸の王さまでも自分の身を滅ぼすことが明白な核戦争に直ちに打って出るとは考えられないが、実験といえども地球の放射能汚染の観点からも由々しき問題である。
最近の核実験は地中で行う。地中で行えば、昔のビキニ環礁での実験のように大量の放射性汚染物質を直ちに大気中に振りまくことがない。
しかし、何回も述べるが我々が「大地」と呼んでいる地殻は地球全体から見た時、リンゴの薄皮のようなものだ。そんな薄い部分に半減期が何万年にも及ぶ放射性物質を将来とも安全に閉じ込めておけると思っているのだろうか。
金正恩だけでなく、世界の権力者はそのことを忘れないで、一刻も早く後始末のできない核分裂反応を操作することを止めてほしい。
我が国のバカボンは今のところ核爆弾を保有するとは言っていないが、彼の思考過程を読み進めれば、いずれは日本も核保有国の仲間入りをして超大国の一員であると宣言したいに違いない。
チェルノブイリを上回る原発事故を起こして、未だ収束の目途が立たないにも拘わらず、原子力発電に固執する理由の一つが、原発の産業廃棄物として産生されるプルトニウムの確保にもあると思われる。
誰もが手を引いた方が良いと考える核増殖炉もんじゅの廃炉をかたくなに認めないことからも彼の核武装志向が覗われるからだ。
さて、肝心御膝元の福島第1原発がまた大変なことになっているらしい。1月6日付の東京新聞によると、絶え間なく増え続ける汚染水を貯めておく貯蔵タンクから予想外の廃液漏れが起きているというのだ。
高濃度汚染水は液体のままで貯蔵すると危険性が高いので、特殊な薬剤を混ぜて放射性物質を付着させ、泥状の廃液にして強固な容器(直径1.5m、高さ1.8m)に閉じ込める。
ところが頑丈なはずのこの容器から汚染水が漏れているのがみつかった。その数34基に及ぶ。原因を究明したところ、泥状の沈殿物と水とが反応して水素ガスが発生し、汚泥が膨張して、上部の水がガス抜き穴から溢れているというのだ。想定外の事態だったという。
この容器は現在すでに1700基に達している。このため現場では、完全防護の態勢で毎日点検するほか、漏れが起きる可能性が高い容器から順番に、ホースを使った手作業で水抜き作業をしているという。
この漏れ出す水は放射性セシウムが1万ベクレル/1リットル、放射性ストロンチウムが3000万ベクレル/1リットルと極めて高濃度の放射性物質を含んでいるために、近づくだけで危険な被爆をする恐れがある。
さらにこのうち1000基は3段積みにしてあるために、水抜きのためには一つ一つクレーンで動かして作業をしなければならない。そして抜き取った水を別の容器に移動させたのちに再びクレーンで移動させるという気の遠くなるような作業を強いられている。
しかも、汚染水はこれからも増え続ける。作業員の年間許容被爆量を考えると、当初想定した何倍もの作業員を必要とする。
安倍の言う「1億総活躍政策」の中には、通常の仕事ができなくなった人間をこの汚染水対策につかせることも想定しているのだろうかと邪推したくなる。
たった1か所の原子力発電所の事故でさえ、この先ずっと気の遠くなるような、しかもなんら生産性のない労役を強いられる。しかもこれで事態が完全に収束するわけではなく、地球に回復不可能な傷を残す。
安倍にひとかけらの良識があるならば、原爆所有の野望を捨て、既存の利権にしがみつくことを止めて、一刻も早く電子力発電を中止する決断をしてほしい。