投稿日:2015年4月6日|カテゴリ:コラム

最近、我が最愛の黒猫ルイが顎下の蜂窩織炎に罹患して大騒ぎになった。4日間、排膿して抗生物質の注射を射ってもらうために獣医さん通いをした。今は壊死した皮膚を切除して、開放創に1日3回軟膏を塗布している。幸いなことに綺麗な肉芽が形成されて快方に向かっているが、それでも顎の下に直径2cmほどの皮膚欠損部ができて痛々しい。
あと少し発見が遅れたら、敗血症になって命の危険があったと思う。なぜもっと早く発見できなかったのかと後悔するのだが、猫の顎の下はなかなか普段目に着かないところだし、何よりも猫はとても我慢強くて痛がらない。
とはいっても、今から考えると発見の1週間ほど前からご飯をあまり食べなくなり、動きが緩慢になっていた。しかし16歳という年齢から加齢に伴う衰弱という先入観にとらわれてしまっていた。昨年17歳で大往生した先輩猫ムックの後を追って、そろそろルイも寿命かなと思い込んでいたのが大間違いだった。異変は少なくとも7日ほど前から始まっていたのだと思う。

感染症に限らずどんな病気も、本人や周囲の人が気付くようなはっきりとした症状や徴候が現れるのは病気が一定以上の段階にまでさしかかってからだ。実は病気はそれよりずっと以前から始まっている。病気の過程が粛々と進行して、ある一定の限度を超えた時に症候として花開くのだ。
症候が現れる前の段階で気が付いて治療すれば大きな被害を受けずに治ることが多い。一方、膵臓癌などのように、症状や徴候が現れてからだとすでに手遅れという病気も少なくない。だから早期発見、早期治療のための健康診断や人間ドックの意義がある。

先日の報道ステーションでの元経産官僚、古賀茂明氏の不規則発言に、びっくりすると同時に、「やはり」と納得した。
中東情勢のニュースでキャスターの古館伊知郎氏が古賀氏に解説を求めると、質問主旨とは関係なく唐突に「テレビ朝日の早河会長、古館プロジェクトの佐藤会長の意向で、最後ということになりました。」と切り出したのだ。
慌ててとりなす古館氏を尻目に、政府の意に沿わない番組を制作したプロデューサーが左遷されたと発言。さらには、古館氏に対してマハトマ・ガンジーの「あなたがすることのほとんどは無意味であるが それでもしなくてはならない そうしたことをするのは世界を変えるためではなく 世界によって自分が変えられないようにするためである」という言葉をフリップ付きで突き付けた。番組終了間際には「 I am not Abe 」と書いたフリップを示しながら、菅官房長官を中心とした安倍政権に対して「 No ! 」を叫んだ。
公共の電波をハイジャックする形で、一方的に自己の主張や人事に関する楽屋話を暴露した古賀氏の行動は賛成できない。番組を観ていて違和感を超えた不快感を覚えた方は私だけではないだろう。しかし、古賀氏がこのような乱暴な行動をとらざるを得ないと判断した危機感も充分に理解できる。
先の衆議院選挙で大勝してからの安倍政権の行動は、数にものを言わせて強引そのものである。しかも政策の中身は、国の大多数を占める中小企業や一般庶民から搾取して一部大企業と富裕層利する経済政策。戦後長らく築き上げてきた平和国家の看板を叩き割って、戦争資本主義国家への鞍替え。個人の権利は国家の利益の前には圧殺される全体主義の復活だ。そして何よりも恐ろしいのが、そういった過激な政策を一瀉千里に推し進めるための前提としての言論統制である。
憲法9条の解釈変更、武器輸出三原則の改悪、自衛隊法の改悪、年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の株式運用枠の拡大、残業代ゼロ制度導入など、これかからの国の命運を左右するような重大事項を次々と閣議決定で改悪している。にもかかわらず、こういった危険な動きに対して大手マスコミの舌鋒は鈍い。
NHKでは夜の顔だった大越健介キャスターが左遷された。NHKのアナウンサーとしては珍しく個人的見解をさしはさむスタイルが官邸の逆鱗に触れたようだ。また昨年夏にはクローズアップ現代で国谷裕子キャスターと菅官房長官の対談上、菅が国谷さんに論理的にやり込められてしまったことに腹を立て、詫びを入れさせた。
戦後歴代内閣の中でこれほど露骨な言論介入をする政権は無かったのではなかろうか。NHKの場合には政府が会長人事を握っており、安倍言いなりの権力の亡者、籾井が会長に居座っているから致し方ないだろう。しかし、民放はもう少し骨があるかと思っていったが、このところの報道を見るとそうではない。
一応政府批判らしきものはしているのだが、肝心の要点を外して核心に切り込まない。単に世の中の不満のガス抜き装置として政府に利用されている感がある。今回の古賀氏の行動によって官邸の直接的、そしてスポンサーを介しての間接的圧力は私の予想以上に強いことがはっきりと分かった。今尾の世情は大手新聞がこぞって政府の御用新聞と化した戦前の大政翼賛会の時代に酷似している。
このままでは日本は「美しい国」どころか格差はますます拡大して「戦争をしてでも利益を追求し、弱気を挫き、強気におもねる醜い国」にまっしぐらだ。
思考とは目の前にある事象に疑問を感じ、批判することから始まる。現在の日本国民を見ると思考を停止して大樹、安倍を無批判に支持しているように見える。

みなさん、現在の生活は良くなっていますか?これからの暮らしに希望が持てますか?よく考えよう。そして一刻も早く我が国の社会を蝕み始めた国家主義という癌を駆除しよう。社会の健康にとっても早期発見、早期治療が肝心。2009年のコラム「いつか来た道-危ぶまれるテロの時代-」にも書いた通り、分岐点を過ぎてしまってからでは遅いのだから。

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