投稿日:2015年2月9日|カテゴリ:コラム

昨年7月の佐世保の女子高生による同級生解剖殺人事件、そして先日逮捕された19歳の名古屋大学女子大生による殺人事件など猟奇的な殺人事件が相次いで、「サイコパス」という言葉を耳にするようにになった。
サイコパスとは反社会的人格の一種を示す心理学用語、精神病質(psychopathy)の人を指す精神病質者(psychopath)のこと。

精神病質とは人格の発達障害で、その障害の傾向や程度が本人あるいは社会を苦しめるようなもので、しかもその異常が生来的であるものをいう。一旦偏りのな い人格が形成されたのちに、精神病、脳障害、異常体験などによって人格が大きく偏位した場合には人格変化として扱われて、精神病質とは呼ばない。
また、人格が大きく偏位していたとしても。その異常が本人や社会を苦しめることがなく、むしろ人並み以上に優秀という場合にも精神病質としては扱われない。つまり精神病質という言葉そのものに負の意味がある。
だが、そもそも正常と異常の境界は甚だ曖昧であるし、「本人や社会を苦しめる」という点には価値基準が含まれるために、精神病質という障害は客観的、普遍的に確立した障害ではない。
さらには遺伝性、先天的な素質を重視する立場、早幼児期の情緒的体験など生育史を重視する立場、その両者を折衷する総合的立場などがあり、未だ議論の多い分野である。
現在は「本人が苦しむ」という点は重視されずに、主として「社会を苦しめる」という方が重視されて、社会に害をなす存在と同義的に扱われているように思う。

具体的にどういう人なのかというと
①良心の欠如
②他者との共感能力の欠如、極端な冷酷さ
③常態化した嘘
④自分の行動に対する責任感の欠如
⑤罪悪感の欠如
⑥過剰な自尊心と自己中心性
⑦弁舌が達者で、表面的には魅力的
などが上げられる。つまり一見、知的で魅力的だが、他者への思いやりがなく、罪悪感も後悔もなく、社会規範を無視して、人の期待を裏切って、自分勝手に振る舞う人。

だが、佐世保、名古屋の事件がもとで広まってきた経緯を見ても分かるように、サイコパスは殺人者と結びつけられて考えられがちである。すなわち、サイコパス=シリアルキラーと考えられている節が覗えるが、これは間違いだ。
シリアルキラー(Serial killer)は殺害行為を主目的として殺人を繰り返す連続殺人犯を指す言葉。日本では殺人鬼ともいう。1974年から1978年にかけて少なくとも30 名以上の若い女性を凌辱してから殺害した連続殺人犯、テッド・バンディ(Theodore Robert Bundy)に対して元FBI捜査官ロバート・K・レスラーが提唱した言葉である。
彼がシリアルキラーに対して行ったプロファイリングによると、シリアルキラーの特徴としては①男性に多い。②両親が不仲。あるいは身内に犯罪者やアルコー ル・麻薬の中毒者がいる。③幼児期に児童虐待や育児放棄を受けている。④動物虐待の既往がある。⑤成長過程で孤立しがちで異性との正常な成功の経験が少な い。⑥知能が高く、成功している者も少なくない。⑦殺人の手口や被害者の特徴が共通している。などが上げられる。以上特徴的な人格像から、プロファイリン グの最適対象となっている。
シリアルキラーの大半はサイコパスだと考えられる。しかし、サイコパスの全員が殺人を犯すわけではない。シリアルキラーとなるのは興味の対象が殺人に向かったごく一部のサイコパスだけである。
繰り返すが、サイコパスは異常であるが精神病ではない。したがって、ほとんどのサイコパスは通常の社会生活を営んでいる。佐世保の高校生も名古屋の女子大生もそうだった。そこが一層怖いところだ。普段私たちの周りで一見普通の生活を送っている。
サイコパスの多いとされるアメリカでは人口の4%(25人に1人)もいると言われている。この計算からはニューヨークやロスアンジェルスのような大都市では何10万人ものサイコパスが隣人として生活していることになる。
我が国ではアメリカほど多いとは考えられないが、いろいろな場面でトラブルを引き起こす、所謂モンスター○○の中にはサイコパスと思われる人が少なくない。こうしてみると我が国でも相当数のサイコパスが潜在しており、年々増加しているように思う。
こういう人と拘わると、殺されないまでもひどく不愉快な体験をする羽目になる。新たな出会いの際には表面的な印象に惑わされないように用心しよう。

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